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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年11月30日


曇りだ。
今日、俺は病院を出る。

俺は、けじめをつけなければいけない。
俺は、自称美穂を屋上に呼び出す。

少し寒い。


「亜金、退院するとか私聞いてないよ?」

「うん。
 もう決めたんだ」

「どうして?」

「入院しなくても死なないんだろ?」

「……え?」

「もうすべてわかったんだ」

「……そう」


自称美穂は、悲しげな表情をする。


「まぁ、そんな訳でさ。
 結婚しないか?」

「え?」

「俺は、君のことが好きなんだ」


自称美穂は、目に涙を浮かべる。
ダメ元でのロマンチックのかけらもない告白というかプロポーズ。
了承してくれる可能性なんて少なかった。


「でも、私はお姉ちゃんじゃない……
 もう、わかっているんだよね?」

「うん」

「俺は……
 美穂じゃない。
 杉山志穂さんのことが好きなんだ」

「私の名前……」

「うん」

「でも、私は……」

「俺はさ、入院してからずっと俺を励まし続けてきてくれた志穂さんに惚れたんだ」

「私に、そんな資格ない……」

「そんなの関係ないよ」

「でも……」

「だから、志穂さんさえよければ、結婚してください!
 そして、俺と一緒にたこ焼き作ってください!」


俺は頭を下げた。

「寝るときは、私と一緒だよ?」

「うん」

「ご飯上手に作れなくてもきちんと食べてくれる?」

「うん」

「私が、おばさんになっても愛してくれる?」

「うん」

「私より早く死なない?」

「うん」

「亜金、顔を上げて」


志穂さんは、そういって俺の肩に手をたたく。

俺が、顔を上げるとすぐに志穂さんは俺の唇にキスをした。

そして志穂さんは、ニッコリと笑った。


「不束者ですが、よろしくお願いします」


それが、志穂の答えだった。
俺の物語は、ここで終わる。
そして俺たちの物語が、ここから始まる。

そうふたりの物語が……


―おわり―
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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年11月29日


曇り。
俺は、もうひとつケリをつけなければならないことがある。


千春ちゃんが、俺の血圧を測りに来る。
点滴など、最近はしていない。


「ねぇ、千春ちゃん」

「何かな?」

「俺、明日退院する」

「へ?」

「もう、自殺しようとなんか思わないからさ……
 だから、退院する。
 俺が入院しているのって脳腫瘍なんかじゃないんでしょ?
 自殺の再発防止のために入院しているんでしょ?」

「それは、私に言われても……」


千春ちゃんが、戸惑っていると銘先生がやってくる。


「退院したあとは、どうする気なの?」

「たこ焼き屋でもはじめようかな……と思っているんだ」

「たこ焼き?」

「山本さんに教えてもらった技術を活かしてなら、出来そうな気がする」

「そう……」

「うん。
 あと美穂のことも知ってる。
 もうこの世にはいないんでしょ?」

「え?」


千春ちゃんと銘先生が目を丸くさせる。

やっぱ姉妹だ。
驚く顔がそっくりだ。


「あの子の名前は、たぶんだけどわかった気がする」

「そう……」

「だから、俺は、あの子一緒ならやっていけそうな気がするんだ」

「わかった。
 退院手続きの方は、私が上の人に話してみる」

「ありがとう」

「でも、これだけは約束して……
 もう2度と自殺なんてしないで。
 貴方は、もうわかっているはず。
 命の大事さと儚さ……
 そして、もっと生きたい命があったと言うことを……」

「うん。
 わかっているよ。
 だから俺は生きるんだ。
 山本さん、萌ちゃん、充君に歩ちゃん、愛ちゃんの分まで生きる」

「約束だからね!」

「うん」


俺は、ニッコリと笑う。
俺は、生きるんだ。
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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年11月28日

水曜。
おはよう
何月何日晴れー
ひかりは
みずいろ匂い


俺の日記には、今までの出来事が書いてある。
俺のベッドの日記にはおひるねの回数が書いてある。
時計の日記には、子供たちが、何度遊んでくれたか書いてある。

それなら、俺のくちびるの日記には、あなたのなまえ何回呼んだか書いてある。

one two three four five and six…


ランカ・リーの代わりに初音ミクに替え歌を歌わせたスマホの着信音が鳴る。

時間は、7時半。

8時に食事が配られる。
美穂も目を覚まし、俺の顔を見る。


「どうしたの?」

「亜金の寝顔かわいい」

「男にかわいいは、ほめ言葉じゃないからな」

「今の着メロ、いつもの声と違うね。
 歌詞も違ったし……」

「うん。
 ちと替え歌作ってみた」

「隼人君、今日、退院するんだね」

「ああ。
 この病院の院長が運営する施設に行くらしいよ」

「淋しくなるね」

「うん」

「隼人君のところに遊びにいかない?」

「そうだな。
 そうするか……」


俺たちは、隼人君のいる病室に向かう。



「あー!
 たこ焼きのおじちゃんだー」

「違うよー
 たこ焼きのお兄さんだよー」


子供たちが騒ぐ。
はい、微妙な歳ですよね。


「で、なんかよう?」


女の子が俺に尋ねる。


「隼人君いる?」

「うん。
 いるよー」


女の子が隼人君の所まで案内してくれる。


「隼人君遊びに来たぞー」

「あ、亜金さん、美穂さんおはよう」


俺は、暫く雑談した。
そして、隼人君の退院の見送りに立ち会った。


「まぁ、気が向いたら遊びに来いよ」

「うん」

「俺も退院したら、喫茶萌萌に行くことが多いと思うからそこでなら会えるだろう」

「うん」

「んじゃ、元気でな」

「うん、亜金さん、美穂さんありがとう」


隼人君は、施設が用意した車に乗るとそのまま車は発進した。
なんだ……
物凄く淋しくなるな……

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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年11月27日


俺は、いつものようにベッドの上で項垂れている。
すると小太郎と御幸さんが見舞いに来てくれた。
御幸さんは、弁護士……

きっと美穂の話だろう。


「亜金、杉並美穂さんのことで話があるんだ……」


小太郎が、静かな声で言った。


「ああ。
 偽物だってことはわかっている。
 でも、もういいんだ」

「いいってどういうことだ?
 騙されて腹が立たないのか?」

「んー。
 なんていうんだろ。
 腹が立つと言うか、むしろ感謝しているんだ。
 俺に『生きろ』と言ってくれた。
 俺に『死ぬな』と言ってくれた。
 俺に命の儚さを教えてくれた……
 でも、たぶん、あの子は、いっぱい嘘をついている。
 俺が脳腫瘍だと言うのも嘘なんだろう?」


俺は、表情を変えず天井を見た。


「そこまで気づいていたのかい?」


御幸さんが、少し驚いた様子だった。


「うん」

「単刀直入に言うと、亜金君は、健康だ。
 まぁ、少し高血圧ではあるが、生活に支障はない」

「うん」

「で、なぜこの病院にいるのか……
 気になるだろう?」

「そうだね」

「それは、美穂さんの意向らしい。
 美穂さんが、遺言書を残していたんだ。
 君だけが、もし助かった場合、生きる希望を持つまでこの病院で入院させてやってくれってね……」

「そうか……」

「そして、もう2度と自殺しないと誓うのなら退院はできるみたいだ」

「そっか……
 迷惑かけるのもあれだし、自殺しない宣言をして退院してしまおうかな」

「退院した後は、どうするつもりだい?」

「お金もないし。
 野宿だな……」

「彼女は、そんなのを望んでいなかっただろう。
 君の自立を望んでいたはずだ」

「そう言われてもな……」

「とりあえず、あの子をどうするか……
 それを考えるんだ」

「あの子?」

「そう、偽物の美穂さんのことだ……
 あの子も悪気があって君を騙しているわけじゃない。
 君を騙していること、許してやってほしい」

「許すも何も怒ってなんかないさ……」

「そうなのかい?」

「俺、あの子のこと惚れたみたいだ。
 昔の美穂じゃない、今の美穂のことを……」

「だったら、答えは出ているね」


御幸さんが、微笑む。
そう答えは、もう出ている……
問題は俺にその答えを出す勇気が、あるかどうかだ……


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まっしろなティスタメント(小説) [まっしろなティスタメント]

2012年11月26日


隼人君が、俺の部屋に訪れる。


「ねぇ、亜金さんのお父さんとお母さんってどんな人?」

「普通じゃないかな……
 甘くもなければ厳しくもない。
 ただ、俺が甘えすぎて家を追い出されちゃったんだけどな」

「じゃ、僕と同じだね」

「うん?」

「無理心中ってヤツかな。
 車の中で手首を切って僕と妹のマコを車の中に閉じ込めて殺そうとしたんだ」

「そっか……」

「僕が、車から出ている間に車に火が移ってマコは焼死。
 マコは、あの時、生きていたんだ……
 今も耳から離れない。
 マコの『助けて、お兄ちゃん、熱いよ』って声が……
 マコは、最後まで僕に助けを求めていたんだ。
 なのに僕は何もできなかった。
 僕は助けたかったのに、大人たちの手によって阻止された……
 なんとか大人たちの妨害から逃げて車に近づいたら、車が爆発したんだ。
 それと同時にマコの声は聞こえなくなり、僕の左目は見えなくなった」

「……そうか」


なんて声をかけたらいいのかわからない。
何を言ってあげればいいのかわからない。


「親は、多額の借金を残して死んだ。
 会社を運営していて、それなにりお金持ちだった。
 それまでは、ニコニコ愛想笑いを浮かべてお金を借りに来た親戚のおばさんやおじさんたち……
 としてお父さんやお母さんの友人、知人たち……
 お父さんた沢山お金を貸していたけれど……
 お父さんの会社の経営がうまくいかなくなった途端、笑わなくなった。
 誰もお金も返してくれなかった。
 みんなが、返してくれていれば多分、返せた金額だと思う。
 でも、お父さんは何も言わなかった……
 何も言わずに僕たちを巻き込んで自殺した。
 酷いよね……そのうえ、僕をだれが引き取るかで揉めてたんだよ」

「うん」

「悔しくて悔しくて僕は、涙が溢れたんだ……
 アイツらは、お父さんたちを殺したのに被害者面して……
 そんなときにね、愛が現れたんだ……
 『こうすれば何も聞こえないよ』って、言って僕の耳を両手でふさいだ」

「そっか……
 その時に、愛ちゃんんと出逢ったの?」

「うん。
 その時に決めたんだ、僕は、もう泣かないって……」

「そっか……」


今日の隼人君は、おしゃべりだ。
俺は、暫く隼人君の話を聞いた。
俺には、それしかできることができないから……

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